米中貿易摩擦、貨物需要に影響 ANA、旅客動向の影響注視

ANAホールディングスの片野坂真哉代表取締役社長と全日本空輸(ANA)の平子裕志代表取締役社長は、5月28日に開いた社長会見で、米中貿易摩擦の影響が貨物輸送に出始めていることを明らかにした。

1月から3月の日本から中国向けの貨物は、輸送量は24%増加し、単価に変動はなかったため、収入は24%増加した。一方で、中国から北米への貨物は、重量は3%増加したものの、単価が17%減少したことから、収入は15%減少したという。

ANA Cargoは、航空機エンジンや半導体製造装置、リチウムバッテリ-や医薬品などの危険品・特殊品を大量に輸送できる大型貨物機として、ボ-イング777Fを2機導入。7月から東京/成田~大阪/関西~上海/浦東~東京/成田線、10月からは東京/成田~シカゴ線に投入する計画で、沖縄貨物ハブの積極活用や、大型貨物などの影響が少ない貨物需要を取り込むことで、影響を最小限に食い止めたい考え。

旅客需要には現状影響は出ていないものの、平子裕志代表取締役社長は、「貨物需要に遅れること、半年から9ヶ月のラグで旅客需要に影響するのが経験則」として、出張抑制などによる影響を注視する。

三井住友DSアセットマネジメントの調査によると、追加関税引き上げや、ファーウェイに対する制裁、世界の投資抑制、中国の消費抑制による日本の製造業の生産への影響は0.43%に及ぶ見通し。特にコンピューター・電子製品・光学製品製造業、電気機械・一般機会製造業には大きなマイナス要因になるとみている。レポートでは、アメリカで7月上旬から中旬にかけて、中国からの輸入3,000億米ドル分の追加関税手続きが完了した場合、2020年前半にもアメリカの景気が失速するリスクがあるほか、中国での雇用環境が悪化する可能性があると警告した。