【搭乗レポート】最新鋭機「SKY SUITE 787」を体験レポート これぞ日本最高峰のエコノミーシートだ 

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日本航空(JAL)が、昨年12月1日より、東京/成田〜フランクフルト線に投入を開始した新仕様機材「SKY SUITE 787(スカイスイート787)」。

新仕様機材「SKY SUITE 777」「SKY SUITE 767」はすでに中長距離国際線に投入されており、前後幅のゆとりや機内インターネットサービスなどのサービスの評価が高い。そんな中、満を持して投入した「SKY SUITE 787」に搭乗したのでレポートする。

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最初に、「SKY SUITE 787」について簡単に説明しておこう。

JALは、国際線で「JALシェルフラットネオ」を搭載したビジネスクラス42席とエコノミークラス144席の計186席を配置したボーイング787−8型機を既に運航している。

今回新たに投入された「SKY SUITE 787」には、全席通路に面し、フルフラットとなる「JAL SKY SUITE」を配置したほか、プレミアムエコノミー「JAL SKY PREMIUM」を35席新たに設定。エコノミークラスは、”新・間隔エコノミー”第2弾として、座席幅は9列配置比プラス5センチ、前後間隔は従来比プラス5センチ拡大された「SKY WIDER Ⅱ(スカイワイダーⅡ)」を採用。エコノミークラスは88席と大幅に減らし、全161席を配置している。

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ビジネスクラスの「JAL SKY SUITE」とプレミアムエコノミーの「JAL SKY PREMIUM」は、SKY SUITE 777とほぼ同様の座席で、エコノミークラスの「SKY WIDER Ⅱ」は、この「SKY SUITE 787」のために新たに開発されたシートだ。

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搭乗したフランクフルト行きのJL407便は、ビジネスクラスとプレミアムエコノミーは片手で数えられるほど、エコノミークラスは3割程度の搭乗率。

シート配列は「2-4-2」と、一般的なボーイング787-8型機より1席少ないのが特徴。座席幅は従来より5センチ広くなっており、筆者が座ると横幅にはかなり余裕がある。ちょっと狭いからプレミアムエコノミーに乗っているという人も、「SKY WIDER Ⅱ」であれば耐えられるかもしれない。筆者の横2席は空席だったため、プラス5センチどころかプラス2席のゆとりを手に入れたのは余談だ。

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シートポケットには、メニューのほか、エチケット袋、安全のしおり、機内エンターテイメントガイド、機内誌、機内販売カタログが備え付けられている。安全のしおり以外は他の機材と変わりない。

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「SKY SUITE 787」の「SKY SUITE 777」や「SKY SUITE 767」との大きな違いは、モニター周りにある。エンターテイメントシステムは最新の「MAGIC-Ⅵ」を搭載し、全ての操作を画面と画面下のタッチパネルで行うことができるようになったところは大きな違いだろう。ページをめくる動作の”スワイプ”もできるようになった。

これにより、初代「SKY WIDER」ではモニター下にあったコントローラーがなくなったほか、画面横にあった当初はスマートフォンを入れて充電する用途として備え付けられていた物入れ部分がなくなり、すっきりした印象を受ける。

しかし、一番大きく改善された”目玉”はずのこの「MAGIC-Ⅵ」こそが、「SKY WIDER Ⅱ」の最大の欠点であるという結論に至った。

まず、モニターの角度の調整ができなくなってしまったため、前の乗客が座席をリクライニングした途端に画面が見辛くなってしまう。さらに、コントローラーがなくなってしまったため、モニターでマンガが読める、世界でJALのみが提供しているサービス「SKY MANGA(スカイマンガ)」を使う場合は、ずっと腕を伸ばして画面操作をしないといけなくなり、腕が非常に疲れるのである。さらに、復路ではタッチパネルが動作しないというトラブルも発生した。

また、エンターテイメントの貧弱さも目に余る。エコノミークラスの30名程度の搭乗客のうち、フライト中、スマートフォンやタブレットで動画を楽しんでいる人は2割程度、その中には自身でフライト前に購入した映画を楽しんでいる人もいた。

筆者は12月だけでJAL国際線、さらに中長距離線に3回も乗っているため、映画は観たいものが既になく、「J-POPトゥデイ」をエンドレスで聞くくらいしかやることが思い浮かばなかった。

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JALは、近年の新シート投入やサービスの改善により、他社と差別化されたポイントがより鮮明になってきているものの、エンターテイメントの部分はなかなか改善されていない。

例えば、エミレーツ航空は、映画やビデオなど2,000チャンネル以上の豊富なラインナップを売りにしている。また、全日本空輸(ANA)も従来はなかった、人気ドラマ「半沢直樹」の全話放送を現在も行っている。いまだにドラマの第6話だけ放送など、続きが気になって寝られないようなものもあるので、是非全話放送や、外資系航空会社で提供していることが多いCDアルバムがそのまま聴けるチャンネル、映画の新旧作ラインナップを増やすといったところを要望したい。

特にJALの中長距離便の場合、利用者は価格面のみで選ぶ人は少なく、年齢層も相対的に高いので、王・長嶋の「ON対決」とか、9年間連続してジャイアンツが日本シリーズを制覇した「V9」時代の古い映像を流したらそれなりにウケると思うのだがいかがなものだろうか。個人的に、「『笑点』がないので乗る気をなくします」とアンケートが来る度に送っているものの、一度も採用されないのが非常に残念である。

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離陸後だいたい1時間ほどで、おつまみとドリンクのサービスが開始される。

おつまみは12月中旬から新しくなったもので、季節に応じてパッケージが4種類。柿の種・大豆・磯・小枝・パリポリ・半月あられ・アーモンドの7種類を組みあわせたもので、ベジタリアンに対応。ANAは、今年3月からムスリム(イスラム教徒)のハラールとベジタリアン認証を受けたおつまみを、ジャカルタ・デリー・ムンバイ線で提供しているが、JALは遅れながらも、おつまみを提供する全路線で切り替えた。

確かに、ANAがベジタリアン認証のおつまみを提供している路線では、特にインドはベジタリアン比率が40%を超えるなど相対的に高い数値となっているものの、両社就航地のドイツやイギリス、アメリカも人口の10%ほどがベジタリアンと言われており、利用者の割合で考えれば、より多くの便を飛ばしている欧米線でも提供すべきところである。JALが全路線で一斉に切り替えたのは大きなインパクトを与えたといえるだろう。

特にそれを実感したのは、復路のフランクフルト発のフライト。筆者の隣席にベジタリアンの乗客が座っており、ベジタリアン対応の英語表記を確認していた。また、当日に搭乗口でベジタリアンミールを注文したと言っていたものの、機内食はちょうどショートパスタが搭載されていたため提供ができていた。観光立国を掲げ、インバウンド客が急増していく中、ベジタリアンやムスリムへの対応は今後、ますます必要になっていくはずだ。

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その後にサーブされた機内食は、和食は「豚たまごとじと牛ごぼう」、洋食は「グリルチキン&ペンネクリーム」からチョイス。すでにどちらも食べた事があるが、今回は洋食を選択。

読者の間でJALの機内食の評価が最近高いのは、確実に食後に提供されるハーゲンダッツと、野菜やフルーツが多めであることが効いていると思う。さらに、赤を基調とした暖色系の色使いであることも、機内という閉ざされた空間でホッとさせる効果もあるのかもしれない。オリジナルディップソースも利用者の間では密かに人気だ。

日系航空会社の機内食では過去多かった、そばかうどんとパンとご飯といった”炭水化物オンパレード型機内食”ではなく、近年、急速にマトモな食事になってきたため、利用者としては機内食がより楽しみになった。

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リフレッシュメントは、さつまいもブレッドを提供。

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そして、着陸の2時間ほど前には、12月から来年2月までの期間限定メニューの「AIR スープストックトーキョー」が提供された。

AIRシリーズでのスープストックトーキョーとのコラボは初。2013年にも両社はコラボしており、機内でスープストックトーキョーのスープが提供されるのは2回目。

スープ以外は早くサーブされたものの、メインディッシュの食べるスープ「帆立と野菜のチャウダー」は、温かいスープを提供するために5分くらい待つ必要があった。今回は搭乗率が3割程度、同じ機内食を提供するプレミアムエコノミーも合わせると3割以下だったが、満席になるともう少し待つ必要があるかもしれない。しかも、お預けを食らう時間は意外と長く感じる。

メインの他は、「柚子胡椒風味のたらこパスタ」「石窯パン」「グレープフルーツ」で、配布された案内では、たらこパスタを途中でスープに入れることをオススメしている。入れても入れなくても充分美味しいが、想像以上に柚子胡椒の風味でテイストが変わるのが面白い。

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フランクフルト国際空港には、ほぼ定刻で到着。

13時間近いフライトでも、より快適に過ごすことが出来たのは、ボーイング787型機は従来機より機内の湿度を高く保てるからというだけではないはずだ。快適性の高い「SKY SUITE 787」「SKY WIDER Ⅱ」は、JALが投入する最高のプロダクトの一つであると自信を持って言える出来といえる。

JALは、1月1日より「SKY SUITE 787」を東京/成田〜ニューヨーク線にも投入を開始。今後も投入路線を拡大していく計画だ。

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