「奄美大島線の成功で離島路線も検討に値する」 バニラエア、石井知祥社長単独インタビュー(上)

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7月1日、エアアジア・ジャパンからバニラ・エアにブランド変更されて以降、初の独自路線となる、東京/成田〜奄美大島線に就航した。

ANAグループが就航していない奄美大島をなぜ選んだのか、同社の今後の戦略とともに、石井知祥(いしい・とものり)代表取締役社長に聞いた。

ー現在の搭乗率を率直にどう思うか。

立ち上げは12月20日で、年末年始は結構高い。1月は正月明けの中休みで逆に65.5%。2月は北海道の雪や機材故障で少し就航率が悪かったですが、77.8%までいった。3月は79.4%。4月はGW含めて数字が予想外に厳しい。というのは、3月30日からサマーダイヤになった時に、機材が6機に増えて、ダイヤをかなり動かしてしまったのと、発売が2月後半と出遅れて苦戦した。

ただ、3月は就航率99.4%で2便の欠航だけ。4月も2便の欠航だったので就航率は99.7%と目標を達成した。定時発着率は、4月は90%を超えている。定時性と運航の安定については、かなり目標に近づいてきた。これは一番大事なところ。まだまだ浸透していない部分もあり、リピーターだけではなく、新規利用者を広げる取り組みは不十分。収入ベースでは全体の計画の中では大きなブレはない。予想外にキャンペーン運賃などで単価が低いが、それ以上にコストもうまく抑えている。

ー機材導入スケジュールはどのような形に?

今はスケジュール通りで保有機材は6機ある。今年はANAからリースしている166人乗り3機を10~12月で新造機に切り替えて、年内で新造機6機体制になる。2015年は2月、3月に1機づつを導入し、計8機になる。

ーウェブサイトが使いづらいというのがエアアジア・ジャパン失敗の理由の一つだったと思うが、バニラエアのウェブサイトの利用者の反応は?

使い勝手がわかりやすくなったり、気がついたら保険や手荷物がついていたというのこともない。見やすく操作もしやすいという評判もいただいた。

最初の立ち上げでアクセスが悪いというお叱りがあったが、今は安定しており、評価していただいていると思っている。

ーそれは搭乗率に反映されている?

まだまだバニラのホームページに来る人が想定より全然足りない。もっともっと増やすためにはどうしたらいいのか、他所とのリンクを増やすなど更なる工夫が必要と感じる。知名度があれば自ずと入ってきますから。流入量は期待しているような数ではない。何倍も増やさないといけない。

ー直販とツアーだと、直販のほうが多い?

8割くらい。もっともっと、同じ8割でもパイを増やしたい。アクセスを増やしていくというのは課題。

ー新たに開設した奄美大島線はリゾートと地域活性化という両側面がある、いままでにない就航地の選定だったと思うが、なぜ奄美大島、他社が入っていないところにしたのか。

かねてより関心を持っていた。去年、本土復帰60周年が話題になったし、世界自然遺産を2年後に国が積極的に登録に向けて動いているということもあって、我々としては沖縄と違う自然が残された奄美大島という目的地、ポテンシャルはあるけど全然知られていないというところで、我々に就航先として一番しっくりする。ピッタリはまったなと。そこに、成田から年間でオペレーションしてビジネスになるかは非常に不安だったけれども、ずっと奄美振興審議会で、航空運賃が高いから交流を増やすにはどうすればいいのか、沖縄と比べてという議論は過去からあったので。

うちのパイロットの中に奄美が大好きな人間が何人もいて、以前から奄美やりましょうという声があった。個人の趣味の域ですけど。県や地元からの話もあり、奄美振興交付金が後押しした。

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ー交付金の交付内容が決まってない時点で就航を決めたというのは、一人いくらか定額かというのは見込みがあってのことなのか。

県が、具体的に航空運賃を低減するためにどういうスキームを作ってどう調整するのかに注目している。ある程度活用できるということで、県知事とお会いしてる。我々はある程度早くスキームを教えて欲しいけれども、それ以外にいろんなサポートのお願いはしている。着陸料は6分の1減免で決まっているので、本当はゼロにしてほしいけれどもそこまでは要求できるかという問題はある。

成田、首都圏で宣伝費を使えないので、県や地元にプロモーションのお願いをしている。空港の整備も県にお願いする予定ですけれども、我々は地盤がないし、JALさんは地元で手一杯ですし、自前だとコストがかかる。トーイングバー1本でも持っていかざるを得ない。出張旅費も相当なコスト。

我々は新しい需要を掘り起こしたい。年1回家族で海外に行くには30万、40万かかった。すごく安くなれば、今まで行けなかった人や、年1回だった旅行に年2回行くという需要も出てくる。奄美はどっといくディスティネーションではないと思うが、ポテンシャルはあるのでうまく化けてくれればいいなと。

ー奄美大島線は搭乗率が低くても補助金あれば成立する?

でも単独で地盤がない。今まではANAのサポートがあった。大事なのは継続して低廉な運賃を提供するという点で、サポートをお願いしていきたい。

空港もベルトローダーの補修に1500万とかかかってしまう。基本のところは直してもらわないと。セキュリティレーンなど、必要な部分は改修してもらいたい。

ー首都圏と奄美大島からの乗客の比率は?

基本的には、まだ首都圏からのほうが多いと思う。奄美の方は人口も知れているが、奄美市だけで4万、群島で11万ですから。首都圏のほうに20万人(奄美から)出てきている人もいるし、釣りやとかサーフィンで行く人もいる。初便に乗るファンの人もいっぱいいる。多分、8割くらいが首都圏では。

ー奄美大島は移動がしづらいところがあると思いますけれど、北海道中央バスなどとの取り組みのように現地とコラボレーションなどで決まっているものは。

旅行会社は現地の選択制(オプショナルツアー)のものがあると思う。我々はそこまで具体的にしていない。現地にはレンタカーもあるが、最近の若い人は運転しない人が多いことから、巡回バスの運行なども今後の課題。メインの移動手段はレンタカーで、バスも飛行機に合わせて走っているくらいですし、課題として残っている。地元観光協会含めて、マイクロバスくらいでいいので巡回してもらえるといいが具体的な話はない。

ー奄美大島線の2便化はまだ先になるということ?

そうですね。

我々のビジネスモデルは複数便の運航が基本だが、需要を鑑みながら判断していくこととなる。基本的には単独で複数便でしかやらないというのに反するけれども、東京から8万人しか行かないところに複数便というのはない。将来的にはありうると思う。

ー奄美大島が成功したら、離島の対馬、福江、壱岐、久米島といったところも検討に値する?

値すると思う。まずは奄美大島を成功させることが大切。交流事業などで、こういう(補助金)モデルである程度成功させたい。沖縄に行ったら、宮古も飛ばしてと県知事が協調されていた。そういうスキームができればすごくおもしろい。奄美大島もそういう面では需要の掘り起こしを図りたい。交流事業なんかもいろいろと考えている。我々が就航する入ることで、観光分野を中心日域が活性化すると思う。若い人のUターンやIターンでの定着が期待できるし、移住者も増える。我々の役割がすごく大事だし、意義を感じる。我々のビジネスになりつつできればと期待している。

事業全体としては、できる限り国際線だけ海外を充実させたい。”国際7:国内3”くらいに。国内においてはもそれなりにいいんですが、インバウンドをどう取り組んでいくかが課題。成田を拠点とする事の立ち位置をしっかりと確立したい。羽田の国際線も増えたが、路線からいえば成田。インバウンドのお客様方を札幌、沖縄、奄美へ送客したい。国際線から国内線も考えて。LCCですから接続の仕組みはしていないですが、定時性を守れば乗り継げるなというのが出てくる。札幌は1割が台湾から乗り継ぎのお客様、これが2割、3割になってくると思う。先日はマレーシアのグループが、国際線から乗り継いでいた。他社便から乗り継いでいる人は今はそうでもない。欧米から奄美という選択肢も出てくる。((中)に続く

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