新経済サミット2014、トニー・フェルナンデス氏講演「航空業界における破壊的なイノベーション~LCC革命がアジアの航空業界にもたらしたものとは?~」全文書き起こし(前編)

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2014年4月9日・10日に新経済連盟が開催した、「新経済サミット2014(NES)」で、「航空業界における破壊的なイノベーション~LCC革命がアジアの航空業界にもたらしたものとは?~」と題した、エアアジアグループCEOのトニー・フェルナンデス氏の講演を全文書き起こした。2回にわけてお送りする。

皆様おはようございます。まず、三木谷さん(楽天株式会社創業者、代表取締役会長兼社長)、この素晴らしい会議にご招待いただきましてありがとうございる。素晴らしい方にお会いできてとても嬉しいですし、ここまできちんと組織されたまた素晴らしい面子が揃った会議は本当に初めての経験となる。

今舞台裏におりまして、昔のことを思い出していました。元々音楽の事業をやっていたので、今ここに登場するのはポップスターのような気持ちとなる。元々、様々なアーティストを扱っていました。中森明菜ですとか、X-JAPAN、槇原(敬之)などを担当した経験があります。X-JAPANの後にエアアジアXを作ったわけですけれども、昔はこういったミュージシャンと六本木で楽しい夜を過ごした経験があります。

さて、まず、エアアジアに関するプレゼンをしてから、ご質問を受けたいと思う。

13年前にエアアジアをパートナーと一緒に、25セントという価格で買いました。そして1000万ドルの債務がありました。音楽業界というのはインターネットのイノベーションが遅すぎると感じて、航空業界に乗り込んだわけとなる。航空について何も知らなかった、しかしアイデアだけはあったという状態でエアアジアを始めたのとなる。9月9日つまり、9.11の3日前に事業を開始したわけとなる。完璧なタイミングですよね。それ以降、ありとあらゆる問題に直面しましたので、その中のいくつかを紹介したいと思う。

さて、2001年12月8日、2機の航空機、100人のスタッフ、2,000人の乗客という状態でありました。これが1年目の状況となる。5年間事業を続けて、大体1億8000万リンギットぐらいの損失が出ていました。全く儲からないのではないかという状態が続いたわけですけれども、我々がテイクオーバーをしまして、真っ赤に塗り替えたわけとなる。

赤はできれば避けたかったわけとなる。リチャード・ブランソン(ヴァージン・グループ創設者)の真似ではないかと言われるのは嫌でしたし、真似をするつもりもありません。月に行きたいとか考えていませんし、三木谷さんと東京にいたほうが月に行くより楽しいとなる。あるいは気球に乗って旅行するより楽しいとなる。でも、赤というのはパワフルな色であります。

まず、このロゴ、エアアジアのブランドを作りました。やはりブランドというと、コカ・コーラというとコカ・コーラのロゴが目に浮かびますよね。ナイキといえば、ナイキのイメージが浮かぶと思う。ロゴというと一つのイメージが頭に浮かばないといけないわけとなる。元々鳥のイメージが付いていたのですが完全に無くし、エアアジアという言葉だけのロゴにした。

過去12年間を見てみると、最初の年は(乗客は)20万でしたけれども、今年になりまして、大体5200万人の乗客がいる。ということで、また日本の市場にも再参入できること、2015年に戻って来れることを願っている。そして5年間ずっと、LCCとしてはナンバーワンであることを非常に誇りに思っている。

さて、乗客数の伸びですけれども、SARSや鳥インフルエンザ、地震、津波が起きたり、ありとありとあらゆる問題がありました。そして政府によってブロックされたりということもあったわけとなる。やはり起業家であると必ず障壁に直面するわけとなる。しかし、必ずどこかにチャンスがある、どこかに目の前が拓けてくるところがあります。例えば、SARSの時は誰も飛行機に乗りたがりませんでした。飛行機に乗ると死ぬと思う人がいたわけとなる。ということで、フライトやキャパシティが減ったわけとなる。

マーケティングチームに私は、「これは逆にチャンスである、マーケティング費用を3倍にしよう」と言ったわけとなる。いったいあなたは何のクスリをやっているのですかという変な目で見られました。しかし、「今こそブランド価値を構築するときだ、他の航空会社は広告を打っていないのでは」と言ったわけとなる。

マレーシア人に関しましては、充分に運賃が低ければ命が危なくてもチケットを買ってくれます。800リンギットはダメだけれども、80リンギットならコタキナバルまで喜んで飛びますよと、そういう考えた方となる。なので、SARSの時期も少し儲かり、そしてブランドを構築することができ、生き延びることが出来ました。やはり起業家としては必ず問題に直面します。必ず問題が起きます。

市場を破壊して新しいことをやる際、新しい起業家はより早く対応できるはずなんとなる。つまり、大企業で非常に昔からインフラを持っているところに比べたら早く動けるはずとなる。

さて、世界で最低運賃を我々は提供することができている。そして市場を刺激している。我々がやったことは、今回の会議が破壊がテーマであるように、航空業界を破壊したわけとなる。エアアジアの前にはLCCはありませんでした。

しかし、格安運賃を持ち込むことで、これまでまったくなかった運賃体系ができたわけとなる。東京のホテルを考えてみてください。5つ星ホテルばかりでは東京の市場は小さいとなる。レクサスの車しかなかったら、ほんの少人数しか車は持てないでしょう。これより違う価格帯を持ち込むことで、市場全体が伸びるというのが、10年間やってきたこととなる。

2億2000万人がエアアジアにこれまで乗りました。そして、おそらくそのうちの6割というのは生まれて初めて飛行機に乗った人達となる。これは後ほどデータを見せたいと思う。

では、どのように赤字の会社を25セントで買って、今は35億ドルぐらいの規模になったのかということを考えていきたいとなる。テクノロジーではなく人の話をしたいと思う。

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人員に我々は注力をした。会社にとって一番重要な資産というのは、やはり人材であります。航空会社は非常にヒエラルキーがはっきりとしていて硬直している。コミュニケーションもよくないという状態でした。そういったものを破ろうとしたわけとなる。

私には部屋がなく、デスクしか有りません。みんな同じ大部屋のオフィスで仕事をしている。通常はパイロットやエンジニアはチームに分かれているのですが、やめたのとなる。全員が同じ場所で仕事ができるようにした。通常はエンジニアとパイロットは仲が悪いのですが、それによって会社にコストが発生します。

ということで、チーフパイロットとチーフエンジニアにお互いの写真を財布に持って歩けと言って、必ず隣同士に座って食事をしろと指示をした。その1枚の写真で数百万ドル節約したと思っている。従来的な考え方を打ち破ったのとなる。

今日は三木谷さんとのためにドレスアップしてきましたが、通常は非常にカジュアルな格好をみんなしている。そしてスタッフもそのほうが話しやすいわけとなる。スーツとネクタイではどうしても社員と自分の間に距離が出来てしまう。自分の服装が社員よりもみっともなければ、社員は喜んでCEOのところに話に来てくれるというわけとなる。

ですから、トップ少数の頭脳ではなく、社員全員の頭脳を使ったほうがいい。この服装ですので、場合によっては不法移民に間違えられるのですが、それは仕方ないことだと思う。(後編はこちら

(画像:YouTubeから)