おもてなしの格安温泉旅館に注目! 長野・戸倉上山田温泉「御母手成志(おもてなし)の宿荻原館」のおもてなしに迫る!

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長らく続く不況の影響で、有名温泉地においては旧来の大型温泉旅館の閉館が相次ぐ中、それら施設を簡易にリニューアル、お手軽なバイキングの夕食などを提供し、1泊2食8,000円程度という価格帯の激安温泉旅館チェーンが人気を博しており、チェーン間競争も激しさを増しています。

しかし、利用者の中には、老朽化した施設やセルフサービスの多さ、夕食の内容などに対するサービスへの不満の声が多く聞かれる中、でも「安いから仕方ない」という割り切りや諦めの声も多く、大型施設ゆえの簡易で画一的なサービスしか提供できないという施設側のジレンマもみられます。

ところが、これらチェーンの価格帯にして、安かろう悪かろうではなく、快適でおもてなしの心溢れる、コストパフォーマンスの高い温泉旅館が、いま注目されています。

そのような、全国各地の快適でハイコスパな全国の温泉旅館を紹介していきます。
 
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長野県戸倉上山田温泉「御母手成志(おもてなし)の宿荻原館」

千曲川に沿うように温泉地が開ける戸倉上山田温泉は、全国各地の温泉地に散見されるように往事の活気はなく、長らく続くデフレの影響もあり、特に団体客を大量に受け容れていたような大型温泉旅館の苦戦が目立ってきました。そのような中には閉館する施設、大手格安チェーンに鞍替えされた施設もあります。

しかし、そのよう大型の施設と比較して、中規模、小規模の施設は「お客様個人」という原点に立ち返り、サービスとは何か?という視座から、一個人のゲストに対する宿泊者目線というサービス提供の努力を続ける施設が目立ち、その施設規模ゆえの奮闘が、戸倉上山田温泉の再生に活力を与えつつあります。

そのようなサービス、おもてなしの秘密を探るべく「御母手成志(おもてなしの宿)荻原館」を訪れてみました。

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ここで、10年前に筆者が体験した、御母手成志(おもてなしの宿)荻原館の「おもてなしエピソード」を紹介しましょう。

筆者は、温泉旅館のビニールスリッパが苦手で、いわゆるパイル地の「お持ち帰りスリッパ」を携行して使用することが多く、10年近く前にこちらの旅館を初めて訪れた際も、持参した白いパイル地のスリッパを使用しました。

ところが再訪すると、既にパイル地のスリッパが用意してあるのです。「お使い下さい!」という女将。

前回、持参したスリッパを使用している姿を見た女将が用意してくれていたのです。

また、筆者は温泉旅館へチェックインすると、移動の疲れもあり直ちに客室で布団で横になることを旅館へ希望するのですが、実現していただけるのは高級旅館が多いところ、こちらでは早速リクエストが実現されていました。

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このような個人満足をもたらすサービスといえば、高級旅館がその代表格ですが、こちらは決して高級旅館ではありません。料金は1泊2食で8,000円台からの予約が可能です。

かような価格帯の小規模旅館の場合、施設が充実しておらず、不潔で古いケースなどが多いのですが、良い意味で予想を裏切ってくれます。スモール温泉旅館ともいうべき規模だからできる進化なのかもしれません。

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温泉のメイン通りに面し、少々喧噪を感じるロケーションですが温泉情緒が感じられます。

建物自体の経年感はありますが、よく手入れされた館内はリフォームもされ、清潔感もあり心地よく、1階にある大浴場は湯量も豊富で源泉掛け流し、湯の花が漂う硫黄の香りの湯に心底癒されます。

最上階の露天風呂は、特に温泉街の情緒が感じられ、ゆったりできる夕刻から夜がおすすめです。

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何よりも感心するのは夕食です。この宿泊料金にして部屋出しです。格安チェーンのブュッフェ夕食に見られるような喧噪や、料理の大量供給といったせわしさとは無縁です。

客室利用状況に余裕のある時は、隣の客室が食事専用に用意されます。

これまた贅沢ですが、部屋食に付き物の慌ただしさはなく、同行者と水入らずでリラックスできます。食事の内容は、地産メニューを積極的に採用。最近、新しい板長になってからは、特に創意工夫がみられます。

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宿泊料金に糸目を付けなければ、もちろん高いサービスを享受することができますが、出迎えから感じる美人女将を中心としたチームワークの良さ、女将をはじめスタッフのみなさん全員からおもてなしの心が「見える」荻原館。

サービスとは合理性を内包しますが、おもてなしは心の追求です。派手でも豪華でもないけれど、ホッとくつろげる雰囲気は貴重。小規模の温泉旅館だからできるのかもしれません。とはいえ、値上げせず、停滞せず、常に進化することは至難です。

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戸倉上山田温泉の旅館女将や主婦らでつくる「湯あがり美女連」の代表も務める女将の荻原祥子さんに、お忙しい中取材対応していただきました。ありがとうございました。

取材日:2013年8月21日
執筆:Hotelers編集長・ホテル評論家 瀧澤信秋