究極の旅行者「パーマネントトラベラー」とは何か 紺野昌彦氏に聞く

皆さんは、「パーマネントトラベラー(Permanent Traveler)」という言葉をご存知だろうか。

「パーペチュアルトラベラー(Perpetual Traveler)」とも、略称として「PT」とも呼ばれるこの人種。日本国内での普段の生活の中では、なかなかお目にかかる機会も少ないかもしれない。

このパーマネントトラベラーとは、広義では各国で非居住者とみなされる滞在期間の間だけ滞在し、税金をそれぞれの国へ合法的に払わない、もしくは支払う税額を最小にするライフスタイルのことを指す。これだけを聞けば、究極の節税術であると思うだろう。

日本では、日本国外に住民票を移転し(国籍は日本のまま)、181日以上を海外で過ごして満2年を経過すると、日本でのほとんどの納税義務が免除される。
ただし日本国内で発生する所得は日本で収める事が必要となる。
FXや株の売買などの利益が非課税の国も多く、海外に移住する富裕層が多いのもこのためといえる。

ですが何も富裕層のみが海外移住できるわけではないという。

例えば年に約3ヶ月90日ほど日本に滞在し、マレーシアにも約3ヶ月弱滞在、香港にそれ以外の地域に残り期間を生活する。
これでも列記としたパーマネントトラベラーだ。
一定の権利収入があればこのような生活もまったく夢ではないだろう。

世間にはノマドワーカーという言葉があり、一定期間ごとに複数の都市に移動したり、オフィスを持たずに都内のカフェなどを仮設のオフィスとして、場所を選ばずに仕事をする近年で流行しているビジネススタイルだ。

しかしこの場合、事務所経費などの維持費も節約できるものの、その分純利益も増加し、課税対象額も大きくなることもある。そうならなければ、単に事務所経費も出すことが出来ないのにジリ貧独立だけした人ともいえる。

このように決していいことだけではないと語るのは、複数の国を移動しながら生活する紺野昌彦さん。

聞くと紺野昌彦さんは基本的な居住地は持っていないという。
様々なビジネスの流動化、グローバル化が大きくこのような環境作りに大きく寄与し、マーケットのIT化の加速で、更にパーマネントトラベラーを生む状況に拍車がかかっていると彼は言う。

実際にパーマネントトラベラーの生活について聞いてみた。

ー実際にどのような生活をしているのでしょうか。
紺野氏「

僕が海外に関係を持つビジネスを始めたのは、15年以上も前になる。当時は海外の安価な生産国から原価で物を仕入れ、物価の高い日本でその商品に付加価値を付けて販売するという単純な差益ビジネスでした。
当然、原材料も労働力も生産コストも安価な海外での仕入れは、時には日本国内の10分の1以下のこともありました。

途中在庫を持つというビジネスは当然、在庫という大きなコストもかかり、置く場所にもコストがかかります。実際に複数店舗を持つまでに事業は拡大しましたが、事業の拡大イコール大きなコストとの戦いでもありました。

物価などのコストの安価な海外で仕入れをしていたのですが、在庫の管理なども海外の倉庫などに移すことで、コストの圧縮などいろいろ考えていたのが、現在の生活スタイルの走りだと感じている。

今のようにIT化が進んでいない時代ではありましたので、かなり原始的な方法でのスタートだったでしょうね。今ではネット収入の支払い先は海外という事も多いでしょうから直ぐに海外に拠点を移す環境がありますからね。

短期間で実店舗が数店舗以上に成長させていたのもあり、あるきっかけで、コンサル業などの依頼があったのですが、それは行政関係や、地域活性化などの講師などのお仕事でした。

これで在庫を持たずに、経験や知識などが対価となり、純利益幅も大きく、人件費もかからないベストビジネスにシフトできたかな?と当時の僕は、この仕事に鞍替えをするわけとなる。

その後、ビジネスツアーで海外に日本の事業者さんを連れて行くという事を始めした。
20万円から30万円の間の参加費で、1回30人前後の皆さんを中国、タイなど、主にアジアの国々の仕入先の視察、製造元視察、海外でのビジネスマッチング会などにお連れする事業も、2010年頃から年に数回やっていました。

居住地が日本でなくてもよいなと強く感じたのはこの頃からとなる。

海外視察という事もあり、クライアントは海外事業社も増え、益々日本でなくても仕事ができる環境になりました。

また当時は円高という事も手伝って、また世間では資産の他通貨分散という風潮も後押しして、急激にクライアントさんも増え、海外に不動産販売事業を始め海外の生活にシフトした感じとなる。

2015年に海外事業(タイ、カンボジア)を日本の上場企業にバイアウトして、それから完全に今の生活スタイルにシフトした。

ー


実際の居住国はどこが中心なのでしょうか?
そして今の生活スタイルはどのような感じでしょうか?
紺野氏「
現在の家はタイのバンコクにあります。
でも契約は法人名義でのものになりますが、実際に住んでいるのは月に1週間くらいでしょうか。忙しい時には1ヶ月間はタイの自宅に帰れない時もあります。だから実際にはタイに住んでいると言えないかもしれませんね。

現在は、タイ、中国、香港、マカオ、台湾、日本、ロシアが主な活動地域となる。
年に数回は行くところを含めるとプラス2カ国から3カ国はあります。

結果的に一つの地域での滞在期間が、極めて短くなってしまっているのが、僕がパーマネントトラベラーである所以かもしれません。

一度計算して出した事がありますが、年間80日くらいがタイのバンコクで、香港も80日くらい。日本が120日くらいで、残り80日前後がインドネシア、台湾、カンボジア、ロシアなどでした。

もちろんこれは仕事だけではなく、単純な休暇も含みます。

ー

実際の仕事の仕組みや、税金がどうなっているのか、差し支えない程度で教えて下さい。


紺野氏「
僕が海外に住民票を移したのはかれこれ6年前となる。
居住地を置いているタイではありません。
タイにも会社はありますが、代表者はタイ人となる。実際の株の約過半数は僕が持っていうという感じとなる。台湾に会社はありますがここも代表者は台湾人スタッフで僕は株で支配権があるだけとなる。
ただし、僕が個人名義で株を持っているわけではありません。
香港法人や他の国の法人で株式の名義としており、どこの国の会社の代表者にも役員にも名前すら連ねていません。

全ては株の配当で収益から利益をもらっている。
これは香港をベースにして配当を受け取るのですが、香港の法律では株式配当などの配当益は非課税という税制度が偶然あったからでしょうね。

もちろんタイ法人など、それぞれの法人から上がる利益に関してはそれぞれの国の税法に基づいて納税はしていますが、僕個人の所得で計上されることはほとんどありません。

どの国からも給与はもらっていませんからね。株を所有しているだけとなる。

また中国企業と結んでいるコンサル契約や顧問契約がありますが、これらもシンガポールなどの第三国で受益を受ける形になっている。
実際にその国での労働もありませんし、更なる第三国での事務処理をしているので、シンガポールや香港などでは域外利益としてこれも非課税なのとなる。

もちろん僕は税の専門家ではありませんので、それぞれの国の会計事務所、税理士事務所などに相談しながらではありますが。皆さんも会計事務所、税理士事務所にしっかり相談してみてはいかがでしょうか?」

ー
実際にどのようなビジネスがPTに向いていると思われますか?
またおすすめのビジネスはどのような内容でしょうか?
紺野氏「
一番早いのはFacebookでよく見ていると、FXやバイナリーで一定の所得を上げている人や、株で一定の収益を上げている人たちでしょうね。
今ではビットコインなどの暗号通貨でもそうでしょう。

これらは日本では勝った分、負けを差し引かずに課税されますが、香港やシンガポール、ドバイなどでは、インカムゲインやキャピタルゲインはそもそも非課税ですので、納税対象外となる。

このようなスタイルで生活している人こそ、日本でする必要はないかもしれませんね。
またコンサルなどで、株や為替のノウハウを教えている収入は日本国内で発生しているでしょうから、年に181日以内の日本への出張として処理をして、その分だけ日本で納税し、自身の売買は海外での所得にしたらいいのに。ってよく感じます。
もちろん渡航費や滞在費は経費で落ちますからね。

またアフィリエイト収入なんてよくわかりませんが、Googleなどの海外法人からの収益ですよね?ならそんな方もなんか考えればいいのにと思ってしまいる。
アゴダやエクスペディアなどの旅行サイトもマーケットを全世界に対象としながら、拠点はシンガポールとなる。
これも完全に税対策でしょうね。
世界的にみる大企業、スターバックスやFacebookなども税の安価な国に拠点を置き、対策しているのもそんな背景からでしょうね。
もちろん詳しく税理士さんに相談してからでしょうけど。」

ーこれから海外に拠点を移したり、PT化を考える人に何かアドバイスをいただくとしたらどんなことでしょうか?


紺野氏「僕は、税金の専門家ではありませんので、しっかりと専門家に確認をとることでしょうね。
実際に国外財産調書制度など新しい規則がたくさん出来てきている。
うっかりと先に資産を海外に移したりすると、知らない間に大きな問題になるリスクもあるかもしれません。

この制度では日本に居住している人が5000万円以上の資産を海外で保有した場合に、毎年年末に申告をしないといけない制度となる。

また医療制度もそれぞれの国によって大きく異なる。
海外に住むということは、日本のサービスが免除される。ということは国民健康保険や厚生年金などの義務もなくりますが、サービスも受けられなくなる。
ようするに国民健康保険、社会健康保険などが持てなくもなる。
VISAやマスターカードの付帯保険や、長期の海外滞在者向けの医療付きの損保などもありますからこのあたりの事もしっかりと事前に調べる必要もあるでしょう。

また語学が堪能な方ならば、海外での医療保険や積立保険に加入するのも手ではあるでしょう。」

ー最後に何かあれば教えてください。


紺野氏「

何も海外住んでいるのが決して税金逃れ、いわゆる租税回避というわけではありません。
世界の多くの人に接することで、日本という国をしてもらうきっかけにもなりますし、世界のマーケットを狙う日本人に多くの情報を提供することも可能なわけとなる。

また、なんと言おうと世界の人口は大きく流動化しているのも事実となる。
これから先はもっと多くの人たちが、多くの国々と交わるでしょう。
そのような環境から結果として、パーマネントトラベラーであったり結果海外赴任であったりと、諸外国で住むことになる日本人は増加するでしょう。」

「今でも100万人以上の日本人が海外で生活している。
それでもまだ日本国内の海外情報は少ないのですからね。

日本がガラパゴス(日本国内のみを見る経済構造と消費構造)と言われて世界に取り残され、大きく景気後退したのも、理由の一つと僕は感じている。
そんな中、1人でも多く海外から情報を発信し、日本人にグローバルリテラシーを持ってもらう、はじめのスタートが海外移住者やPTと言われる人たちなのかもしれません。
最初のグループこそ異端児に見えるものですからね。」



■プロフィール
紺野昌彦(こんの・まさひこ)
1971年尼崎生まれ、バンコク、香港在住(自称)。
高校時代に起業しこれまでに30以上の事業を起こし、2014年には年商11億円まで自社を成長させバイアウト。また2002年から2010年の間に複数の選挙プロモーターとして当選実績を持つ。現在は香港で投資会社の運営を行う傍ら、外資系上場企業の役員、顧問などを務める。運営する投資関連のブログに定評がある。