ANA、羽田で大型ランプバス自動運転実験 年内にも試験運用へ

全日本空輸(ANA)は1月22日、羽田空港の制限区域内で自動運転バスの運用実験を開始した。第2ターミナルでの乗り継ぎや空港従業員の移動の効率化を図るため、年内の試験運用開始を目指す。

実証実験用の車両には、自動運転技術との親和性や環境性能が高いBYD製の大型電気バス「K9RA」を採用。自動運転システムは先進モビリティが提供する。センサーで車両の周囲の状況や現在地を推定するSLAMやGPSなどを使い、自動運転レベル3(条件付き自動運転)での走行検証を行う。

車両はSBドライブの遠隔運行管理システム「Dispatcher」と連携させている。車内の状況をAIで検知し、運行中に乗客が立ち歩いたりした際に自動で注意喚起などができる。さらに、遠隔監視者に指示を出すためのスマートフォンアプリを開発。地上係員が乗客の乗降を確認後、アプリを操作して発車やドア開閉の指示を送ることで、誤乗などを防ぐ。

今回の実験では、第2ターミナル58番スポット付近の北乗降場を発着地に設定した。65番スポット付近で転回し、北ピアを経由して北乗降場に戻る1周約1.9キロのコースで実施する。メディアに公開された22日の実験では、時速約20キロで走行し、1周あたり約9分で合計8周した。

▲羽田空港制限区域内を走る自動運転バス

近年、日本の航空業界では、インバウンド増大をはじめとする航空需要の拡大や生産年齢人口の減少に伴う人手不足の解消のため、国土交通省の主導でロボットやAIなど先端技術を活用した航空イノベーションが進められている。

ANAはグランドハンドリング領域における業務の「シンプル&スマート化」を目指し、2017年度からバスの自動運転実用化に向けた取り組みをスタート。2018年度には羽田空港制限エリア内で小型バスの自動運転実験を行っている。同社の清水信三専務執行役員は、「いよいよ実際の利用を想定した検証を始める。東京五輪まで200日を切った。世界中から日本が注目される機会に、より多くのお客様に新しい技術に触れていただけるよう、年内に試験運用を実現したい」と意気込みを話した。今回の実証実験は1月31日までを予定している。

▲ANA格納庫でお披露目された自動運転バス

▲第二ターミナル北ピア周辺を走る自動運転バス

▲交差点で自動的に一時停止し、右折する

▲自動運転レベル3ではドライバーが乗車するが、基本的にはシステムが全自動で運転する

▲「Dispatcher」による遠隔監視の様子

▲SLAMによって自動的に作成された車両周辺のデジタルマップ

▲自動運転バス車内

▲車内の状況を監視するため、天井部に設けられた複数のカメラ

▲遠隔監視者への指示用アプリ