SPGアメックス、フリマサイトなどで紹介制度”悪用”が横行 イメージ悪化必至か

アメリカン・エキスプレスの「スターウッド プリファード ゲスト アメリカン・エキスプレス・カード(SPGアメックス)」の紹介プログラムをめぐって、制度の悪用を狙った行為が横行し、年会費3万円以上の高級クレジットカードのブランドイメージが悪化しかねない状況になっている。

「SPGアメックス」とは

スターウッド プリファード ゲスト アメリカン・エキスプレス・カード

アメリカン・エキスプレスがマリオット・インターナショナルと提携して発行しているクレジットカードで、年会費は34,100円(税込)、家族カードが17,050円(同)。カード入会で、通常年間25泊以上の宿泊で付与されるマリオット・インターナショナルの会員プログラム「Marriott Bonvoy」のゴールドエリート資格を獲得することができ、100円あたり最大6 Marriott Bonvoyポイントの還元率や、カード継続時の無料宿泊特典も、同カードの魅力として挙げられている。Marriott Bonvoyポイントは最低5,000ポイントで宿泊できるほか、マイルへの交換も可能。そのほか、空港ラウンジや航空便遅延補償など、旅行や買物関連の特典もある。これらの特典が年会費に見合うかどうかの判断は人それぞれだが、マリオット系列のホテルをよく利用するならば、たくさんの特典を受けられることは間違いないだろう。

このSPGアメックスは、5月7日から新規入会の特典を期間限定で拡充し、通常は入会後3か月以内に10万円以上カードを利用すると30,000 Marriott Bonvoyポイントを付与するところ、同30万円以上カードを利用することを条件に、2倍の60,000 Marriott Bonvoyポイントを付与するキャンペーンを開始した。このため、3か月以内に30万円を決済すると、通常の決済ポイントとあわせて最低でも69,000ポイントを獲得することが可能になる。

なお、他のクレジットカードでよくある「初年度年会費無料」といった特典はなく、初年度から年会費を支払う必要がある。また、入会キャンペーンは、過去にアメリカン・エキスプレスのカードを発行、退会した場合などを対象外としている。アメリカン・エキスプレスのカードの再入会や複数所有は可能なこともあるが、入会特典は初回のみ適用するため、過去の入会実績などを確認した場合は、特典を無効にするとしている。

しかし、このキャンペーンでの還元されるポイント数の多さはやはり破格で、ネット上でも話題になり、SPGアメックスを取り上げた記事の閲覧数が、本誌内でも一時ランキング1位となった。

1人紹介ごとに、紹介者にも30,000ポイント

このSPGアメックスの入会にはユニークな「紹介プログラム」がある。すでにSPGアメックスを保有する会員が、新たに会員を紹介すると、アメリカン・エキスプレスは、通常は1人の入会につき30,000 Marriott Bonvoyポイントを紹介者に進呈している。複数人紹介すれば、紹介者へのポイント数も増える。加えて、紹介された入会者(被紹介者)も、通常のボーナスポイントが増量されるという仕組みだ。

この「紹介プログラム」をめぐってメルカリやラクマといったフリマサイトや、ネットオークションサイト最大手のヤフオク!に大量の「SPGアメックスの紹介」の出品が相次いでいる。いずれも300円や1円といった最低出品金額で出品されており、「入会特典のポイントに加えて5,000円の報酬」「10,000円分のカードを送ります」といった出品も目立つ。「紹介」の出品はキャンペーン開催前もあったものの、執筆時点で、各サイトをあわせて、このような出品が100以上あるとみられ、キャンペーン開催で出品数が大きく増えた印象だ。

アメリカン・エキスプレスは、紹介プログラムにおいて「友人、家族、お知り合い」を紹介することを想定し、「不特定多数の方への勧誘活動等の行為」の禁止、さらにオークションや各販売サイトへの出品の禁止を明記しており、「カード申込みに際し、金品等を要求する行為」「年会費やカード特典など当社のサービスについて誤解を与えるような勧誘行為」なども禁じている。

なお、自身のサイトやSNSなどでSPGアメックスを紹介し入会を誘導する、いわゆる「アフィリエイター」による紹介行為も、不特定多数への勧誘とみることができるが、アメリカン・エキスプレスは実質的に黙認してきたとみられる。事実として、「SPGアメックス 紹介」などと検索すると多くのサイトがヒットする現状がある。

一方で、フリマサイトやオークションサイトへの掲載は、明らかに禁止行為に該当している。さらに、SNS上では、利用者による「いきなりSPGアメックスの紹介URLが送られてきた」などの投稿も相次いでおり、事実であれば本来の「紹介」という行為からかけ離れてしまっている状況だ。

ただ、このSPGアメックスの紹介プログラムは、各紹介者固有のURLを紹介者が送信したり、入会希望者の氏名と電子メールアドレスのみを入力してアメリカン・エキスプレスが入会方法を案内したりするなどといった方法を採っており、紹介者と被紹介者の関係性をアメリカン・エキスプレスが把握することは極めて難しいとみられる。現状では、フリマサイトやオークションサイトへの出品など、本来の紹介の趣旨と離れてしまっている行為への対策は困難だろう。

アメリカン・エキスプレスは、これらの”悪用”される紹介制度や、高級カードとしてのブランドイメージが悪化が避けられない状況に対して、どう対応するのだろうか。今後の動きが注目される。