ANAが見据えるコロナ後の航空業界、”第3ブランド”やピーチとの関係を聞く【ANAHD・片野坂社長インタビュー全文】

ーANAからピーチへの路線移管を始めた。今後の路線移管についてはどう考えているか。
来年の事業計画からはANAとピーチのネットワーキングを担当する部署が共同で計画を作っていく。大きな進歩と大きな変化。角突き合わせていたりしたが、一緒に作っていこうというのは大きなこと。ジョイントマーケティング、ジョイントネットワーキングというのは大きな変化だと思っている。

ANAが国内線で126機、ピーチが37機あり、少しピーチに移管をしていく。まず5機相当でスタートする。ピーチの方は関西、成田、中部を基地にしていく。ANAの方は羽田と伊丹を中心としたネットワークを充実させビジネス需要に応える。ピーチはレジャーと新規需要を見つけていく。

象徴的なのは今回のピーチのガチャ。出てきたのは釧路など。お客様はちゃんと釧路に行こうとするという。こういうマーケティングはもうピーチならではでないかと思う。こういったお互いいいところを生かしていく。ピーチのマーケティングは異次元。かつては機内で外車売ったりした。こういうところを是非引き出していきたいなと思っている。

ー成田発着のANAの国内線全体、羽田発着でも地方路線でピーチに関すればもう少し値段が下げられて、需要が増えるであろうという路線を移管するような可能性というのはあるか。

グループ内で競合するのではなく、路線に対してそれぞれの強みを生かした役割分担を行っていく。お客様は運賃だけではなくて、ピーチになると面白いところがあるというところに期待している。

LCCだからビジネスマンが乗らないってことはなく、朝の一番機は確実に定刻で飛ぶ、そうするとビジネスで使えるじゃないか。このように地方から東京に行くのに、LCCを使うビジネス層も出てくると思う。これからはそういう運賃政策もあると思う。ジョイントでネットワークや運賃、こういったものを考えられるようにしていきたい。

ANAもかつて1万円で乗り放題みたいなことをやったが、ピーチのサブスクリプションはびっくりされたと思う。ピーチが貨物を扱いたいというのは、私は良いチャレンジだと思う。ピーチの飛行機は元々貨物を積むために作っていない。ANAの(エアバス)A320はコンテナが積めるが、ピーチはどちらかというと旅客数を増やすというような仕様だった。それでも貨物をちゃんと運んでいこうというチャレンジはいいこと。

ーピーチ、第3ブランドの新しい航空会社ともに羽田の乗り入れについてどのように考えているか。
ANAブランドが羽田、ピーチは成田と棲み分けるか。羽田は混雑空港なので、夜中はともかく発着枠もない。我々の政策では、LCCは敢えて競争の激しい羽田路線に固執する必要はないと考えている。

むしろ羽田以外の空港。地方と地方をつなぐとか、そういうところを目指したい。地方からLCCで成田に来て、そこからLCCバスで都心に来るというのはコロナ前の流れだったと思う。こういった流れを掴んでいけると考えている。ANAグループ全体で最適なネットワークを目指していく。

出張で東京に来る人がLCCで成田に着いて、都心に向かっている景色を私も見ていました。決して、LCCはもうビジネスに縁がないってことはないと思う。シンガポールではアジアのLCCがシンガポールとインドネシアの間を1日何十往復もする。日本の駐在の人たちは朝の便で出張に行っていた。夕方なら遅れる、だが朝一番は定刻なので使える、と。

通しの予約を受け付けなかったが、これも時代が変わっていくと思う。通しの予約やスルーバッゲージ、こういったサービスが入ってくると思う。そうすると、LCCというのは通し予約ができない代わりにローコストで自慢していたビジネスモデルだが、これからきっと変わってくる。

LCCはよくローフェア(低運賃)なんだという説明だったりする。ローコストエアラインだと、働く人たちもなんとなく待遇が低くなりそうなイメージを持つ。だから昔、ライアンエアーの社長が、「私たちの会社のパイロットや客室乗務員はすごい働いてすごく給料もらってんですよ」って言っていて、実際調べたらそうだった。飛行機の稼働を良くするなど工夫している。

一般の日本の人は、LCCはコストをセーブしてるから安全じゃないのでは、のような先入感を持っていると思うがそれは全然違った。新しい飛行機を使っていますから、故障も少ないです。LCCのイメージを払拭するような、新たなネーミングがないかなと思っている。

ー今、注目している他の航空会社は。
中国のエアラインですね。深セン航空で上海から成都に乗った時に良かった。ビジネスクラスだったのですが、スリッパのビニールも破いて足元に置くんですよ。ホットミールも美味しかった。同じことはロシアの飛行機にも久しぶりに乗ったときに、驚くことに笑顔でサービスがフレンドリーだった。ですから変わってきているという実感がある。

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