外国人観光客に絶大なる人気「ホテル東洋」【はんつ遠藤の大阪・西成C級ホテル探検(9)】

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新型コロナの感染リスクは少なくなったとはいえ、まだ予断を許さない昨今。ホテル業界にとっても県民割や今後のGo To トラベルキャンペーンの再開という好条件はあるものの、現状ではまだまだ厳しい環境が続いている。ましてやインバウンド需要に頼って来たホテルは、なおさらだ。

また大阪へ向かった。

僕は、日本航空(JAL)もJALグローバルクラブ(JGC)会員、全日本空輸(ANA)もスーパーフライヤーズ(SFC)会員なので両社ともラウンジに入る資格を有しているが、それは十数年前に全国にあるフードテーマパークの企画監修などを任されていた頃、年間100回以上、飛行機に搭乗していたおかげであって、その権利を年会費約1万円で購入して維持しているにすぎない。

最近は、もっぱら格安航空会社(LCC)だ。今回も成田と関空の往復。往路がジェットスターで5,980円、復路がピーチ8,560円。復路は受託手荷物も付けた。

関西空港から西成への経路はとても便利だ。南海線で難波駅行の急行などで、最寄りの新今宮駅まで来れてしまう。岸和田駅などで自由席なら特急料金はかからない特急サザンに乗り換えれば、時間帯にもよるが約45分という近さだ。

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今回、紹介させていただくのは「ホテル東洋」。

僕も以前から何度も宿泊させていただいているが、外国人観光客に絶大なる人気を誇る1軒。北側の隣にある「ホテル来山」と同様、コロナ禍になる以前は、多くの外国人観光客でにぎわっていた。

そんな片鱗が、今もエントランスから、ひしひしと伝わってきた。日本語のほかに英語表記も随所にあり、カラフルな雰囲気も相俟ってワールドワイドな空気が、そこにあった。

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「ホテル東洋」の素晴らしき点は、いくつかある。

まず、チェックアウトが午前11時と遅いこと。多くの西成のホテルはチェックアウトが午前9時か10時だ。この1時間の差は大きい。素泊まりゆえに朝食を、例えば喫茶店のモーニングなどで取り、戻ってから部屋で休憩し、そしてシャワーを浴びてからゆったりと出かけるなんてことも可能。

正面玄関は午前1時に施錠されるが、暗証番号を押せばドアを開けることができるので実質24時間出入り自由。しかも暗証番号は毎週火曜日にリセットされる。

フロントで氏名、住所、電話番号を記載し、鍵を受け取り、部屋へ向かった。廊下にはさまざまなインフォメーションが貼られていた。荷物預かり、レンタサイクルなど。なんと屋上には卓球ルームまであるようだ。

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4階建てでエレベーターはなく階段のみなので、歩行が困難な方は注意が必要。今回は3階。開錠してドアを開けば、お決まりの3畳一間が広がっていた。

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一言で表せば、簡素な造り。和室に布団。そしてテレビ。プラスチック製のハンガーが3本。コンセントは1か所。Wi-Fiもあり、速度も申し分ない。

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古い造りだが、清潔感がただよっている。今回はシングルA和室禁煙というタイプの部屋で、エアコンは無し。夏場は扇風機、冬場はアンカが設置される。

年末が近づいて来たこの時期は、エアコンが無くても問題はないだろう。

これで、今回は楽天トラベルで1泊1,330円(税込)。低価格なので文句は言えないが、冷蔵庫もテーブルも、ない。特に覚えて欲しいのはアメニティもないこと。歯ブラシやひげそり、そしてタオルすら、ない。(ともに、フロントで販売している)。

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さて、お決まりの館内探検へと行こう。

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ホテル内は靴で歩けるが、部屋には専用のサンダルも常備され、館内で使用することが可能。洗面所もウォシュレット付きトイレも各階に設置され、とても清潔だった。

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1階には無料の給水システムや自動販売機なども。ホテルの案内によれば洗濯機や乾燥機もあるようだ。

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そして「ホテル東洋」最大の利点が、コモンルーム(交流ルーム)の存在。こたつ付きの部屋&台所、炊飯器、電子レンジ、ポット、そして共用の冷蔵庫などがあり、ちょっとした自炊もできる。

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というよりも、コンセプトが「世界のバックパッカー向けの格安ホテル」なので、世界各国の旅行者と、このコモンルームを中心として交流ができる。壁一面にさまざまな言語で書かれた文字があり、エントランス同様、いや、さらにワールドワイドな雰囲気にあふれている。

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以前に宿泊した際、扉をあけたら、こたつに海外の方がいて、ちょっと驚いたことがあった。今はとても少ないようだが、スタッフの方によると「少しずつ海外の方も増えてきた」そう。実際、今回も欧米から来た、推定20~30代の宿泊者2名に遭遇した。

他にも1階にはシャワールームも。男女共用6室、別の場所には女性専用3室。

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24時間使用可能で、シャンプー、コンディショナー、ボディソープ完備。

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ドライヤーはもちろんのこと、体重計まである。長旅だと、体重変化が気になる旅行者も多いだろう。ちょっとした気遣いが、嬉しい。

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大阪も緊急事態宣言が解除され、夜の街も活況を呈してきた。

前回までは休業中の居酒屋も多かったゆえに部屋呑みだったが、今回からは外呑み再開。知り合いの社長にお招きいただいている僕は、さっとシャワーを浴び、いそいそと心斎橋のワインバーへと向かった。

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翌朝も晴れていた。

昨晩は深夜まで飲み歩いたが、実質、門限もないので問題なく帰着。そしてチェックアウトが午前11時ゆえに、ゆっくりと起き、またシャワーを浴びた。

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「ホテル東洋」の素晴らしきところは、まだある。午前7時30分~11時の間、コモンルームで無料のコーヒーサービスが。

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粉コーヒーとはいえ、これまた嬉しいサービスだ。共用のカップを利用して、粉コーヒーと粉ミルク、ポットからの熱湯で作成。残念ながら他の宿泊客には会えず、今回は交流とはいかなかったが、それでも、ゆったりとしたひとときを堪能した。

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午前11時ぎりぎりにチェックアウトした僕は、JR新今宮駅へと向かった。ホームからは2022年4月に開業予定の星野リゾートのホテル「OMO7大阪 by 星野リゾート」が着々と建設されつつあるのが見えた。線路の反対側の北側である浪速区恵美須西3丁目ゆえ、住所も地域も実際は西成では無いが、西成から徒歩数分と近いことは確か。

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この界隈も確実に変化してきていると、僕は思った。

■プロフィール  
はんつ遠藤
1966年東京生まれ。早稲田大学卒。不動産会社勤務を退職後、海外旅行雑誌のライターを経て、フードジャーナリスト&C級ホテル評論家に。飲食店取材軒数は1万軒を超える。主な連載は「週刊大衆」「東洋経済オンライン」など。著書は「取材拒否の激うまラーメン店」(廣済堂出版)など27冊