旅客機と何が違う? MRO Japanが自衛隊から任される「戦闘機丸洗い」に密着

那覇空港に拠点を置き、航空機の整備事業を専門的に手掛ける「MRO Japan」。日本で唯一のMRO(Maintenance, Repair, Overhaul)事業者として、国内・海外キャリアの機体整備を受託している企業だ。そのMRO Japanが、今年からとある珍しい業務を受託している。

場所は那覇空港にあるMRO Japanの格納庫と、A滑走路を挟んで向かいに位置する航空自衛隊那覇基地の敷地内。第9航空団のF-15J戦闘機がトーイングされてくるのを、MRO Japanの6名の整備士がブラシやバケツを用意しながら待ち構えていた。MRO Japanが今年1月から請け負っている珍しい仕事――それは、航空自衛隊の戦闘機の機体洗浄だ。これまでは自衛隊の整備士が自前で行っていた業務だが、入札によってMRO Japanが今年1月から12月まで受託している。

屋外のスペースに留め置かれたF-15J戦闘機。水洗を始める前に、まずはコックピットのキャノピーなど、機体の継ぎ目や隙間を養生テープで目張りしたり、カバーを掛けたりして保護する。戦闘機は雨の中を飛ぶことも当然あるので十分な防水性能はあるのだが、万が一に備えて万全を期すのだという。実は機体洗浄の一連の流れで最も時間がかかるのはこのマスキング作業であり、約1時間かけて入念に目張りをしていた。

それが終わるとホースで機体全体に水をかけ、洗剤をつけたブラシやスポンジで全体を洗っていく。機体の隅々まで、整備士6名による完全手作業だ。30分ほどで水洗が終わると、最初に取り付けたカバーやテープを全てはがして作業は完了だ。最後に、カバーの取り忘れなどがないかどうか、立ち会いの自衛官と一緒に確認する。

1機あたりにかかる時間は全体で2時間ほど。多い日は1日で4機の水洗を担当することもある。ちなみに、一般的な旅客機の水洗作業も概ね同じような手順だが、例えば戦闘機よりサイズが大きいボーイング767型機の場合は、20名で約2時間かかるという。

ところで、旅客機の機体洗浄の大きな目的は美観のためだ。汚れた飛行機よりきれいな飛行機のほうが、我々利用客としても安心感があるのはおわかりだろう。一方、戦闘機の場合は塩害対策が主目的。機体に付着した塩分をしっかり落とすことが重要なのだという。

▲この日の作業を担当したMRO Japanの6名の整備士

秋分が近づいても蒸し暑さが残る那覇の空の下での作業は決して楽ではないはずだが、MRO Japanの整備士たちは戦闘機の水洗の仕事にやりがいを感じていると口を揃える。飛行機が好きで入社したという整備士は、「特に好きだったのが戦闘機。民間会社として初めての水洗業務に挑戦できるのは誇らしく思う」と満足げ。今回のチームで唯一の女性整備士は、「民間機と違って機体が小さいので、自分の小さい身体でも届くところが多い」と相性の良さを感じている様子だった。日本の空を守る航空自衛隊の翼は、こうした民間整備士たちの手にも支えられていた。

▲水洗前のF-15J戦闘機

▲水洗前に機体の隙間にカバーをかける

▲水洗前に機体の隙間を目張り。1回で10〜12ロールもの養生テープを使うという

▲目張りが完了したF-15J戦闘機

▲機体全体にホースで水をかける

▲機体全体にホースで水をかける

▲洗剤をつけたブラシで機体を洗っていく

▲手が届く部分はスポンジで手洗い

▲水洗後、カバーを外して数をチェック

▲外し忘れがないか立ち会いの自衛官とともに相互確認

▲水洗が完了したF-15J戦闘機

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