緊急事態宣言でも、高齢者最大の抜け穴「シルバーパス」を塞がない東京都のナゾ【コラム】

新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言が、東京都と近畿の3府県に発出された。東京都では、東京ビッグサイトをはじめとする都営施設が閉鎖され、大規模な商業施設への実質的な営業規制も行われている。

一方で、3回にわたる緊急事態宣言で手つかずな最大の抜け穴がある。「東京都シルバーパス」だ。このパスにより70歳以上の高齢者は、わずかな費用負担で、東京都内のほとんどの路線バスと、都営地下鉄、都電荒川線、日暮里・舎人ライナーに乗車できる。一定の条件を満たせば、1年間1,000円で、都内の公共交通の多くを利用できる。

このシルバーパスは、「東京都の高齢者の社会参加を助長し、高齢者の福祉の向上を図るため」という目的が明記されている。通勤の使用は想定されておらず、外出による社会参加を支援するという、昨今の人出抑制に真っ向から対立する目的である。

これまでの2回の緊急事態宣言では、このパスによる使用制限は行われてこなかった。今回の緊急事態宣言でも、この「東京都シルバーパス」による使用制限は行わない。

まん延防止等重点措置が発出されても、都内の路線バスや都営地下鉄などでは、パスを利用する高齢者が多く見受けられる。一方で、東京都はこのパスの利用を制限しなかった。

発行元の東京バス協会も積極的な対策をせず、ウェブサイトに「新型コロナウイルス感染症は、高齢者や基礎疾患がある方では重症化するリスクが高いと言われています。不要不急の外出はお控えください。」との文章を掲載するにとどまっている。このパスを持つ高齢者の1人に話を聞くと、このウェブサイトをわざわざ見に行き、話題にするような高齢者は見たこと、聞いたことがない、という。

重症化するリスクが高いという高齢者こそ、感染するリスクを抑えるための積極的な対策をすることが求められるだろう。このままでは高齢者を中心に感染するリスクを上げることにつながるのではないか。