参加者2,000名突破のクラブツーリズム「貨物線の旅」 発祥の地は“国道6号線”?

新小岩操車場に進入するツアー列車。

通常は乗ることができない鉄道貨物線を半日かけて巡る――。そんなツアーが今、注目を集めている。クラブツーリズムが企画するこの「貨物線の旅」は、2017年7月に初めて実施された。池袋から山手貨物線や新金貨物線、常磐貨物線、高島貨物線などを経由し、品川までをおよそ7時間かけて走破する旅は、“乗り鉄”などを中心に瞬く間に話題沸騰。日本旅行業界(JATA)などが後援する「鉄旅オブザイヤー2017」や「ツアーグランプリ2018」において部門グランプリを獲得し、旅行業界からも一目置かれるツアーとなった。

通常は乗ることができない貨物線を巡ることができるのがツアー最大のウリではあるが、使用されるのが485系「宴」や「華」などのジョイフルトレインであることも大きなポイントだ。畳敷きのお座敷列車で、運転席の後ろには展望スペースが設けられているため、貨物線の車窓を十二分に楽しむことができる。

このほど「貨物線の旅」参加者が2,000名を突破し、それを記念するツアーが10月7日に実施された。記念ツアーは5月19日から実施されている新ルートを走行。上野から常磐貨物線、東北貨物線、川越貨物線、武蔵野線大宮支線・西浦和支線、馬橋支線、新金貨物線などを巡り、約6時間半かけて両国に至るこの旅を、前面展望の写真と共に紹介していきたい。

上野から両国まで6時間半の貨物線巡り

旅の始まりは、北の玄関口とも呼ばれる上野から。15番線を午前9時11分に出発すると、まずは常磐線を松戸まで走る。

最初の貨物線、「常磐貨物線」。三河島付近で常磐線と分かれて勾配を下る。

松戸で上野方面へ折り返し、南千住を過ぎた頃に入るのが、ツアー一本目の貨物線「常磐貨物線」だ。三河島から日暮里方面へ曲がっていく常磐線の高架下をくぐり、田端操車場方面へ直進する。

田端操車場に到着したツアー列車は、JR貨物職員の手旗を合図に出発する。貨物線の旅らしい光景だ。田端操車場から次の貨物線「東北貨物線」を大宮操車場まで走行。その後、「川越貨物線」を経由して川越線へ入り、田園地帯を進んで南古谷駅に到着した。

南古谷では駅長がツアー客を出迎える。

別所信号場から西船橋方面の「西浦和支線」へ分岐。直進すると府中本町方面へ。

南古谷を折り返して大宮操車場へと戻ってきたツアー列車は、続いては武蔵野線の支線となる短絡線を通る。与野駅の南側から西浦和方面へと分岐する「大宮支線」を経由し、途中の中浦和の真下に設置されている別所信号場から武蔵浦和へと至る「西浦和支線(別所短絡線)」を進んで武蔵野線に転線。定期旅客列車では大宮~海浜幕張間の「しもうさ」号などがこの路線を経由しているが、お座敷列車が通過するのは珍しい。武蔵野線は元々貨物線として建設されており、現在も朝晩を中心に多数の貨物列車が行き交う。日本の物流を支える鉄道貨物輸送がどんなルートを通っているか知ることができるのもこの旅の楽しみかもしれない。

武蔵野線から「馬橋支線」・「北小金支線」への分岐点。「馬橋支線」はこの後、右側の武蔵野線の下をくぐる。

やがて右手に流鉄流山線を見ながら常磐線へ。

南流山からは「馬橋支線」へと転線する。武蔵野線を離れ、流鉄流山線と立体交差して常磐線に戻ってきた。そのまましばらく常磐線を上り、金町付近からはこのツアー最後となる貨物線の「新金貨物線」に入る。

新中川を渡る「新金貨物線」。右側には複線化用の橋脚が建つ。

国道6号線などを渡り、中川・新中川沿いを走りながら新小岩操車場へと進む。沿線の葛飾区は、同区内を南北に結ぶこの路線の旅客化を要望しているが、実現には至っていない。

総武快速線を快走。全行程で千葉県には三度入る。

“幻のホーム”とも称される、両国駅3番線に到着。

総武快速線を津田沼で折り返し、最後は同線の最高時速120キロ区間を快走。かつては特急列車として全国各地を駆け抜けた485系の力走を体感し、午後3時36分にツアー終着駅の両国に到着した。

ツアー中の弁当には、今回初めて記念の懸け紙が付いた。

これまでのツアーで配られた特製サボを、記念のゴールド版にして用意。

「貨物線の旅」誕生のきっかけは水戸街道の踏切

乗りたくても乗れない貨物線を走るという、ありそうでなかったこのツアーは一体どのような経緯で生まれたのだろうか。企画者であるクラブツーリズムJR販売センターの大塚雅士氏に話を伺った。

大塚氏は東京・北千住の生まれ。小さい頃から大の電車好きだった大塚氏は、よく渡っていた踏切にいつも電車が通らないことを疑問に思っていたという。国道6号線(水戸街道)の新宿(にいじゅく)新道踏切。大きくなり、そこを通る線路は新金貨物線だということを知った。

「貨物線の旅」生みの親、クラブツーリズムJR販売センター大塚雅士氏。

やがて旅行会社に就職し、現在のJR販売センターに勤務して8年。馴染み深い貨物線を巡るツアーを作りたいという思いを何度もJR東日本に訴えたが、なかなか色よい返事をもらうことはできなかった。年を経てJR側の担当者が替わり、ようやく3人目の担当者が「それおもしろいね。やってみようか」と興味を示してくれたという。

その後、JR貨物との交渉を経て初めての「貨物線の旅」開催が決定。社内の新商品会議で提案した際も、鉄道好きでない社員からはなかなか理解してもらえなかったが、ようやく実現に漕ぎつけられた。

プレスリリースを出すとあっという間にツアーは満席となり、翌日大塚氏が出社するとキャンセル待ちが300名、さらに翌日には600名に膨れあがっていたという。2017年の参加者は約1,200名にのぼり、参加者アンケートで要望の多かった馬橋支線などを通る第2弾コースを開催。そして今回、参加者2,000名を達成した。

「貨物線の旅」の発祥地? 新金貨物線の新宿新道踏切。

近頃は鉄道ファンだけでなく、「沿線の方々が興味を持って乗りに来てくれる」(大塚氏)という。今後、新たなコースとして「武蔵野線の梶ヶ谷(貨物ターミナル)や横浜羽沢近辺も行きたいと考えている」と話す大塚氏。その鉄道愛で、これからも「鉄」で斬新な企画を次々と生み出してくれることだろう。

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