”きれいな日本の電車”のイメージ守る 東京メトロ車両洗浄を取材

中華圏の旧正月である春節に伴う連休が2月16日に始まり、今年も大勢の外国人旅行客が日本を訪れている。日本各地をめぐる外国人から多く聞かれるのは、「日本の電車はきれい」という声。確かに日本の鉄道は通勤電車も含め、車内での飲食が明確に禁じられているわけでもないのに清潔な車内環境が保たれている。

では、その清潔さはどのようにして保たれているのだろうか。その秘密を探るため、東京メトロの車両基地を訪れた。

東京・江東区に86,860平方メートルの広大な敷地を有する深川車両基地は、日本一の混雑路線としても知られる東西線の車両検修や清掃・洗浄業務を担当している。朝のラッシュ時間帯を過ぎ、今日もたくさんの人々を運んだ車両が基地に戻ってくると洗浄作業は始まる。日常的には、基地内に設けられた機械装置による洗浄が二日に一度のペースで行われているが、二週間に一度、人の手による車両内外の徹底的な清掃・洗浄作業が実施される。

東西線の車両は10両1編成。1編成につき30人の清掃員が、車両内外に分かれて作業を行う。車外ではデッキブラシなどを使い、窓ガラスやドアレールの隙間まで丹念に外装を洗浄。各車両間の転落防止幌も取り外され、細部まで汚れが落とされていた。

車内では、床や化粧板はもちろん、手すりやつり革の一つひとつに至るまで人の手で丁寧に磨く。

シートは掃除機やほうきで隅々までゴミを取り除き、場合によってはシートごと取り外して清掃。担当者は「シートの下にティッシュやガム、お菓子の袋が挟まれていることが多い」と話す。以前は網棚の上に新聞や雑誌が放置されていることも多かったが、最近はほとんどないという。

人の手による洗浄・清掃は1編成につきおよそ1時間を要し、深川車両基地では1日に4編成から5編成を洗浄している。夏場の気温の高い車内での作業は大変だという。

2020年に向けて外国人旅行客4,000万人を目標に掲げ、観光立国をめざす日本。その清潔なイメージはこうした人の手によって守られていた。